睡眠時無呼吸症候群とは? ~眠っている間に呼吸が止まる?~
睡眠時無呼吸症候群は、気道の閉塞など様々な原因で睡眠中に呼吸が止まる病気です。
睡眠中の無呼吸は健康な人でもみられますが、10秒以上の無呼吸が1時間に5回以上出現し色々な症状を呈したときに睡眠時無呼吸症候群と診断されます。
色々な症状とは、日中の強い眠気や居眠り、「いびき」、起床時の頭痛、倦怠感などが挙げられます。時には人格変化を来たすこともあります。
特に「いびき」は睡眠時無呼吸の診断の大きな手掛かりになります。現在、日本では2000万人の方が「いびき」をかいており、その10%が睡眠時無呼吸症候群であると言われています。しかし「いびき」は睡眠中のことであり、本人は気がつきません。そのため発見には家族や同僚の協力が必要です。「いびき」の繰り返しの後に、10秒以上時には60秒から100秒の「いびき」の消失がみられ、その後に再度「いびき」の出現が見られます。「いびき」が消失している間が無呼吸です。
睡眠時無呼吸症候群は「閉塞型」「中枢型」「混合型」と3つの型に分類されます。それぞれに応じ治療法は異なりますが、どの型においても無呼吸に伴う低酸素状態や交感神経緊張により循環器疾患を併発しやすいと言われています。
睡眠時無呼吸症候群と循環器疾患
(心筋梗塞、高血圧、不整脈、突然死etc.・・・)
最近、循環器疾患、特に心筋梗塞、高血圧症、不整脈、突然死の原因として睡眠時無呼吸症候群が注目されています。睡眠時無呼吸による心血管系の異常による死亡は毎年3800件にも上るとの報告もあります。
また高血圧症を持つ方の30-40%、狭心症等の冠動脈疾患を持つ方の30-50%、心不全で入院される方の60%程度の割合で睡眠時無呼吸症候群を併発すると言われています。その他、糖尿病や肥満症などの生活習慣病との関係も深いと言われており、そのような事から考えてみても、特に循環器疾患を持つ患者さんは適切な検査を受け、異常があ
れば治療することが必要と思われます。
しかし睡眠時無呼吸の多くは診断されることなく見過ごされています。日常よくみられる病気に潜む睡眠時無呼吸の症状を見過ごさずに早期に発見し、そして適切な治療を受けることは、命に関わる怖い合併症を予防する上でとても大切であると思います。
検査方法について
診断には睡眠時呼吸酸素モニター検査が必要です。睡眠時呼吸酸素モニター検査は、睡眠中の呼吸状態、胸腹部の動き、血中の酸素量、心電図を調べる検査で、それぞれの検査端子を体に取り付けて一晩寝て頂きます。痛みは全くありません。
睡眠時無呼吸症候群の治療
検査にて異常が認められた場合、適切な治療を行うと日中の眠気や倦怠感などの症状がなくなるだけでなく、合併症の予防、改善が期待できます。
治療で一番大切なものは生活習慣の是正です。睡眠中の体位の工夫~身体を横向きにしたまま寝るようにする、減量~食事のカロリーを減らし、運動量を増やす、禁煙禁酒~就寝前の4時間はアルコールを控える等が挙げられます。これらは非常に重要ですが、中等度以上の睡眠時無呼吸には効果が乏しいといわれています。そのような場合には一歩進んだ治療が必要となります。それは経鼻的持続陽圧呼吸療法(一定圧を加えた空気を鼻から送り込むことによって上気道の閉塞を取り除き睡眠中の気道
を確保する治療法)や手術(口蓋垂軟口蓋咽頭形成術:口蓋垂、口蓋扁桃、軟口蓋の一部を切除して気道を広げる手術)です。
最後に
睡眠時間は1日の約1/3を占めます。それは人生の約1/3を占めているとも言えます。その貴重な時間に、自分では気がつかないうちに身体に「無呼吸」と言う負担をかけてはいないでしょうか?睡眠をとることは単に日中の日常生活から離れることではなく、心や身体の疲れをとり気力や体力を充足するために欠かせない行動です。安眠による生活リズムの構築、また安眠から始まる快適な日常生活が必要ではないかと思われます。